『ビールうぐうぐ対談』

目黒ええと、次は『ビールうぐうぐ対談』。1999年3月に文藝春秋から本になって、2002年7月に文春文庫と。初出が「カピタン」の1997年7月号から1年間連載したものと言うんだけど、その「カピタン」って何?

椎名どんな雑誌だったかなあ(笑)。

目黒東海林さだおさんとの対談集ですから、椎名の単独著作ではなく、共著ですね。ですからここでは論評はしません。私が興味を惹かれたことだけを書いておきます。後半になるとゲストを呼ぶかたちに変わって、岸田秀さん、高田栄一さん、そしてラストは沢野ひとし。この沢野の回が白眉。二人が女性にモテル秘訣を沢野に学ぶという回なんですが、すごいなあ沢野。そういうことに金と歳月をふんだんに使ってきたんだなあということがしみじみとわかる。たとえば,

飲めない人と一緒のときは、僕も飲まない。そうすると、「あ、よかった。私、あんまり飲む人って嫌いなの」って言うね。

飲まないと間がもたないって男はダメだという沢野説は説得力がある(笑)。

椎名あいつがおれたちとは違う価値観で生きてきたことが実感できる(笑)。

目黒この対談集は二つですよ。一つは沢野のこのモテル秘訣の驚き。もう一つは椎名が小学生四年生のときに剣舞を踊ったこと。家に板の間があって、そこで化粧したおばさんたちが三味線をベンベンと鳴らしていたっていうのは、母親が踊りの先生だったということ?

椎名そう。それで四年生のとき、鉢巻きを締めて、剣道着に袴をはいて、大勢の前で踊らされた。

目黒鞭声粛々 夜河を過るぅ〜をやったと。

椎名母親に騙されたんだよな。

目黒でもさ、この対談の中ですごく恥ずかしがってるのは、やや大げさだよね。まあ、川中島という剣舞を小学四年で踊るってのは、少しは恥ずかしかったかもしれないけど、そんなに恥ずかしくはないだろ? それをここまで恥ずかしがるのは、ちょっと興ざめだよね。

椎名そうか。

目黒あとは細かなことだけ。地球上で最大のウンコたれはミミズであるとか、焼き肉の始まりは山火事でたまたま焼けた肉を食ったらうまいことに気づいて、そこから始まったとか、なるほどなあという箇所も多い。そうだ、椎名は蛇が嫌いなの? 

椎名やだよお(笑)。

目黒苦手とは意外だった。だって、ヘビ専務の高田さんが持ってくる蛇って、毒はないんでしょ?

椎名そうだけどさあ。

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